生物の ヘンな“かたち”に 秘められた
構造読み解き 進化に迫る
<要点 / この書籍から得ること>
・様々な生物の生態の事例
・生物・生命について定義を試みた表現
・ゲノムなど分子生物学の基本的な理解
※例:「ゲノムは多くのカセットテープが詰まったボックス。染色体はカセット。DNAはテープ。遺伝子は録音部分」(免疫学者・多田富雄による表現)
・ネオダーウィニズムに対する反証事例の解説
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
構造主義科学の立場から数多くの評論を書く生物学者が、風変わりで面白い生物を次々に紹介し、そこから生物学の解説につなげ、生命の不思議や進化のしくみについての考察に展開しています。
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
第1章では「トゲナシトゲアリトゲナシトゲトゲ」というカミキリムシの命名にまつわるエピソードで興味付けから入り、古生代の生物群の紹介から進化のしくみについて触れます。
特に単細胞生物から多細胞生物への進化は、「DNAの突然変異で”かたち”が変わるのは単細胞の生物に当てはまり、多細胞生物の誕生は、DNAの突然変異でなくDNAのコントロールをマスターしたことに起因する」という考え方を披露します。
次に第2〜3章でクマムシの不死身状態やアリの集団行動など紹介し、生命活動の抽象的な記述や、生物の定義をしてます。
(以下例)
◆生きることを支えているのは分子間の位置関係=「クリプト・バイオテック・ステイト(隠れた生命状態)」
◆自己の要素を自前で作りつつ、内部と外部をそのつど確定することによって自己同一性を維持し、しかも自己同一性が変貌する可能性を排除されていない空間(これを「限定空間」と呼び、その限定空間=生命である)
◆生命の基本的なイメージはグルグル回るいくつものサイクル(循環)の複合的なシステム
◆循環システムの軌道が途中で逸れ動的に閉じたサイクルが開くと、我々の体は物理化学的な系に還元されベーシックな物理化学法則だけに支配される。それが死
そして第4章では進化の考察に入ります。
「遺伝子の変化(小進化、DNAの進化プロセス)と生物の形が大きく変わる変化(大進化、発生システムの進化プロセス)は違う現象であり、DNAがいくら変わっても発生のプロセスが変わらなければ生物は変わらない」との主張をいくつもの実験・観察事例から論証し、ネオダーウィニズム(ダーウィンの進化論をDNAが進化の原資であると限定した理論)を否定します。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・発見した昆虫に自分の細君の名前をつけて、その3ヶ月後に離婚してしまった人もいる。学名は永遠だが、愛は永遠ではないのである。
・生命からは、「時間」がどうしても切り離せない。生物はシステムを回しながらどんどんルールが変わっていき、最後は物質のシステムへと落ち込み、死んでしまう。生物は、あがく。あがいた果てに死んでしまうわけだが、それは「生存のためのあがき」である。社会ダーウィニズムが粗っぽい比喩で言う「生存競争」などというようなものではないだろう。
・遺伝するのは、指令だけではなく、指令と、指令を構造に翻訳する解釈システムだ。遺伝子やゲノムだけを産む生物はいない。
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<参照したいサイト>
・池田清彦のあなたも自由人になろう(著者のオンラインサロン)
・著者のツイッターアカウント
<主な参考文献>
・自然はそんなにヤワじゃない(花里孝幸)2009年
・サンバガエルの謎―獲得形質は遺伝するか(アーサー・ケストラー)2002年
・カブトムシと進化論(河野和男)2004年
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