「感情」と 「繰り返し」こそ
生存に 根差す学習 累乗効果
<要点 / この書籍から得ること>
・出版当時最新の脳科学の知見に基づいた効率的な学習法
・動物実験の結果や進化の過程から考察した「記憶の本質」
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
東大薬学部・大学院にトップで進学した脳科学研究者が、中学〜高校生に向けて「科学的根拠に立った記憶の方法」を、平易な言葉と脳科学の知見を簡潔に整理した構成で書いています。
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
まずそもそも「脳は覚えるよりも忘れる方が得意」という前提を挙げ、「学校の成績の差は、脳をうまく”だます”ことのできる人とそうでない人の差」と断じます。
そして、脳が記憶できる2つ、すなわち「”感情”が絡んだ出来事」「覚えようと”意識”したこと」をうまく利用した学習の方法を提唱します。
より単純でより根源的な機能が発達している動物の脳を観察することで「記憶の本質」が見えてくるとし、サルやマウスの印象的な実験の成果から、記憶は「試行錯誤」と「消去法」で形成される事実を示し、「継続する努力」と「失敗にめげない気力」が学習には必要と説きます。
また、コンピュータのように記憶が厳密だったら、変化を続ける環境下では対応できないことから、曖昧でいい加減であることが脳の記憶の本質であることも、生物の進化の過程から説明します。
■経験記憶:自分の過去の経験が絡んだ記憶
■知識記憶:何かきっかけがないとうまく思い出せない知識のような記憶
■方法記憶:ものごとのやり方を覚える記憶。忘れにくくて根強い「魔法の記憶」
以上3つの記憶の様式を記し、方法記憶を最大限活用した記憶法を具体的に紹介しています。
そして、記憶を司る部位の「海馬」の神経細胞に、長期増強(LTP:記憶の脳のメカニズム。神経細胞を繰り返し刺激することで結びつきが強くなる)の性質があることから、「復習は学習の鉄則」である大前提を示した上で、「繰り返しの刺激(復習)を少なくする工夫」として、下記の3ポイントを提示しています。
◆シータ波:興味をもっているときに出る。童心が大切
◆偏桃体:海馬のすぐ隣にある部位。喜怒哀楽などの感情を生じさせ、記憶を強める。
◆その他:空腹や寒さなど生体の危機を利用。長い進化の過程で培われた性質なので、強力で有効
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・復習効果は、あくまでも同一対象に対して生じる脳の作用だということを肝に銘じてください。最低でも同じ参考書を四回は繰り返しましょう。頑固なまでの固執心が、勉強にはどうしても必要なのです。
・進化の過程が長い分、耳の記憶は目の記憶よりも強く心に残るのです。
・勉強を継続していると、山頂に立ったように急に視界が開け、ものごとがよく理解できるようになったと感じるときがあります。ある種の「悟り」に似た境地です。こうした現象はまさに勉強と結果の関係が「累乗」の関係にあることを物語っています。
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<参照したいサイト>
著者のホームページ
東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室ホームページ
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