新しい 都市空間の 里山は
有形無形 コミュニティ資産
<要点 / この書籍から得ること>
・主に東京における都市農業に関する事業の紹介多数
・都市農業振興基本計画にまつわる農政・市街化の歴史的経緯
・「くにたち農園の会」の具体的で詳細な活動レポート
・里山の価値の変遷を再認識し、都市農業における再定義をすることで示される農サービスの方向性
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
TVディレクターから農業法人に転職し、現在は「より多くの市民が農に親しめる新しい農園スタイル」を目指した貸し農園の運営者による、”農の力で社会にインパクトを与える”提言が詰まった本。
『となりのトトロ』でトウモロコシ1本(メイが母に届けようとして迷子に)から生まれるストーリーのように、収穫物の生産利益以外の農が持つ価値、すなわち「暮らしの豊かさの実感」に主眼を置いて語られている。
(下に続く↓)
<書評 / あらすじ&レビュー>
◆IoTのプランター「プランティオ」が、暮らしの中の食農のあり方を変える可能性を示唆
◆東京農業活性化ベンチャーのエマリコくにたちが設立に協力した、国分寺の農家がオーナーの「東京農村」(赤坂の新築5階建ビル)が、都市近郊農家の拠点となる展望
冒頭に以上の2事例を紹介し、「バージョンアップさせるべきなのは、農産業の合理性よりも、都市のライフスタイルの方では?」と問いかけます。
また、海外の都市農業の事情を少し触れて東京の特異性を見出し、都市農業関連事業者にとって追い風となる法改正の流れを解説します。
「都会の人は晴耕雨読の牧歌的な農的体験に憧れ、逆に実際の農家はそれは幻想だと思い込んでいる」、このギャップのマッチングに農的サービスはあるとし、畑での不快感を減らしプラス要素を積み上げるよう、空間・時間・体験の3要素を適切に設計するアイディアを披露しています。
そして、「農家×法人(企業やNPO)」連携を強く推し、著者の運営するNPOでの取り組みや、多くの都市農業者、関連事業の仕掛け人が紹介されています。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・全国の空き家率の上昇は止まるところを知らず、これが人口減少とともに東京などの都市部にも波及することは確実。となれば、国としても、むやみな開発は抑えたいところでしょう。そこで「都市の農地を保全していく」という方針を明確にしたのが、2015年の都市農業振興基本法の制定と、そこから始まる一連の都市農業改革なのです。
・口と胃袋の数が減っている日本では、食の生産自体、需要の減っていく産業なのです。そんななかで、暮らしの豊かさを確保するために農的な空間を維持していくことと、それを次世代に手渡し、多くの人が享受できる道を探ることは、決して農業の本道から外れるものではないと確信しています。
・たとえ農地のない東京の都心部でも、屋上やプランターなどを活用して農的な空間を創出できる。少し郊外へ行けば、住宅地の間に残る田畑がコミュニティ活性の場になっているーー。こうした”都市のすき間”を活かした農的な空間が、いま「新しい里山」として機能していると私は感じています。
<参照したいサイト>
くにたち農園の会 – 「くにたちはたけんぼ」と「子育て古民家つちのこや」
スマートプランター byプランティオ
東京農村
エマリコくにたち
著者の運営する貸し農園で撮影されたノンアルコールビールのCM
アーバンファーマーズクラブ
内藤とうがらしプロジェクト
<主な参考文献>
・渋谷の農家(小倉崇)2016年
・里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く(藻谷浩介)2013年
・農業全書(宮崎安貞・貝原楽軒・土屋喬雄)1697年
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