生物の 概念溶かす 存在が
進化の初期を 解き明かすカギ
<要点/この本から得ること>
・微生物学/ウイルス学の基礎知識と、巨大ウイルスの出版時点最新の知見
・3ドメイン説[真核生物、アーキア(古細菌)、バクテリア]など大分類の系統解析についての解説と、巨大ウイルスを4つ目のドメインとする提案
・「生きている」「生物」の定義に関する生物学者たちの議論の経緯と、生命の誕生まで遡った初期進化論について著者の提唱する新説
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
副題に「生命進化論のパラダイムシフト」とあり、これまでの生物の定義や進化論の通説を覆す異様さを持つ巨大ウイルスについて紹介する流れで、新たな進化論と生命観に言及しています。
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
冒頭、アメーバ内で発見された「細菌と思われた何か」が、光学顕微鏡で見える破格の大きさのウイルスと判明した話から始まります。
その後2000年代に次々発見される巨大ウイルス(ミミウイルス、ママ〜、マルセイユ〜、メガ〜、パンドラ〜、ピト〜)の特徴を詳述し、次章以降の生命そのものの議論への導入となっています。
「細胞が基本単位」という生物のこれまでの定義がゆらぎ、DNAレプリコン(自己複製する環状DNA)のように「自己複製」を生物の基本単位とした場合、ウィルスも生物と考えられます。
そしてウイルスの起源の仮説[細胞が余計なものを削げ落とした/バクテリア内部のプラスミドのような自己複製因子が飛び出した/細胞とは全く違う方法で別個に生まれた]の3つ目に加え、「ウイルスが先」すなわち「バクテリアやアーキアの祖先は巨大DNAウイルス」というシナリオを唱えます。
「ヴァイロセル:通常イメージするウイルスの姿は”ウイルス粒子”であり、”ウイルスを作るもの”すなわち”ウイルスに感染された細胞”がウイルスの本体である」との考え方を踏まえ、細胞の核がウイルス工場(ウイルスが宿主の細胞質で増殖する際に作る共同体のようなもの)と似た機能であり、真核生物の起源に「ウイルスがアーキアに感染した」という新説を立てています。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・高い塔の上には閉じ込められたラプンツェルが、外の世界にいる恋人へ手紙をハトに託すように(実際にそんな話ではないけれど)、細胞核の中に閉じ込められたDNAは、外の世界にいるリボソームへの「手紙」をRNAという物質に手渡すのである。
・「非生物」が生物の進化に大きな影響を与えてきたことが明らかになったとき、ただ「細胞膜でできてないから」とか、「自立してないから」とか、そういった機能上の構造上の制約のみをもち込んで、「生きている」「生きていない」という概念上の事柄を議論する必然性は、もはやなくなってきているのではないか
・巨大DNAウイルスたちのゲノムサイズや遺伝子の数が、最小の生物たちのそれとほぼ同じか、むしろそれを上回っているということは、こうした”ウイルス”たちの増殖戦略が、生物たちのそれに比べて、必ずしも単純ではないということを物語っている。
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<参照したいサイト>
<主な参考文献>
・生物と無生物のあいだ(福岡伸一)2007年
・分子からみた生物進化(宮田隆)2014年
・ウイルスと地球生命(山内一也)2012年
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