合理的な神秘主義 生きるための思想史(安冨歩)2013年4月出版

人類の 思想のマグマ 辿る旅
生きる驚き 求め奔走

 

<要点 / この本から得ること>

・古今東西の思想史の流れ(誰が誰の影響下か)の、表層(有名なもの)と地層(認識されにくいが実は大きな影響力があるもの)の全体像

・我々が考えるべき問題は、「創発(端的に言えば”神秘的な生きる力”)を阻害・破壊するもの(”暴力”と呼ぶにふさわしい)を、如何に排除するか」であるという認識

・著者も含む、この世界での生き方に不安や渇望を抱える”才能のある子”を、魂の植民地化(=自らの生きる力を信じられなくなること)から解放する方法

 

<概要 / 本書の内容をざっくりと>

我々が生きられることそのものを「神秘」ととらえ、それを阻害しているものを明らかにし、それを解除するための学問的な戦略を「合理的な神秘主義」と定義しています。
そして世界中の偉大な思想家たちの系譜を追いながら、その目的達成の手がかりを探っている本です。

(下に続く↓)
 

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<書評 / あらすじ&レビュー>

第一部では、近代西欧諸学は「デカルト/ニュートン」を本流とし「スピノザ/ホイヘンス」を伏流として形成され、ときに後者が吹き出し新しい流れを生み出した、という見方でもって、数多く登場させる古今東西の思想家の中でも、特にスピノザ(17世紀オランダ。”神即自然”を示した『エチカ』など執筆)を要としています。

大まかに言えば、古代の聖人の思想を中世の革新的な思想家が再解釈し、それを近代の哲学者たちが論理的に書き記そうとする試み・苦悩の連続が描かれ、例えば、現代のコンピューターや資本主義が生まれたきっかけは、この苦悩の副産物であることがわかります。

「神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである」
「神秘は神秘である」
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」
など、「神秘」について様々な記述方法で紹介しています。

また、出版から数年以内に著者自身がトランスジェンダーであることを自覚しますが、本書執筆の過程がその萌芽となっていると見て取れる部分が、第二部の中に見られるのも面白いところでしょう。

 

<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>

・言葉が縁起に従って作動しており、その背後に自性など持たない、ということを認めなければ、言葉を正しく使うことはできない。龍樹の空の思想の本質は、言葉を実体化させず、縁起に沿って正しく使うべきだ、という点にある。

・「無能の私をして私たらしむる能力の根本本体が、即ち如来である」つまり無能な私がそれでも生きている、という事実そのものが、如来の存在を証明するのである。この如来の概念は、ヴィットゲンシュタインの「語りえぬもの」および「神秘」や、ポラニーの「暗黙の次元」の先駆と見ることができる。

・我々の世界は非線形性に満ちており、そのような世界に直面しながら生きている、という事実の前では、何らかの「確実なもの」にしがみ付く姿勢は、隷属への道以外の何者でもない。我々は、複雑さのなかで動的に対応して生きていく能力を、生まれながらにして持っている

 

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<参照したいサイト>

ありのままの私(安冨歩) @『1分で読書、』
スピノザと『合理的な神秘主義』by安冨歩さん&寄田勝彦さん

 

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