存在が ”ちゅうぶらりん”の 演算子
描き出すのは 実存へのカギ
<要点 / この書籍から得ること>
・シュレーディンガー方程式の基本的かつ様々なパターンの解法
・数式から読み取れる量子論的な真理の解釈や、この世界の有り様に関する哲学的な問いかけ
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
高校物理の知識で読み進められる量子力学の入門書であり、大学生向けの参考書兼演習書です。
量子論を面白く紹介した、数式をほぼ表記しない一般向け啓蒙書のような直感的にわかりやすい表現も取り入れ、初学書から専門書への橋渡しとなる内容となっています。
(ここではあえて一般向けの本としての書評を書きます。ちなみに筆者は理系出身ですが物理・数学は不得手で、数式を解き進めながらの読み方をしていません。)
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
量子力学を「光・電磁波の粒子性と物質の波動性を述べ、1つの電子の振る舞いを説明する」ものとシンプルに見せ、まずはシュレーディンガー方程式を解くことに主眼を置いて、練習問題と数式の展開の解説が進みます。
シュレーディンガーの導き出した波動関数は、粒子のいかなる具体的な物理量を示すものではなく、それは波動ではあっても媒体を伴った物理的存在でなく数学的なもの(物理的次元を持たない、たんなる数)です。
ある粒子の位置、運動量、角運動量、エネルギーなどすべての物理量は、観測されるまでは”幽霊”的な存在(観測しないから分からないのではなく、本質的に実在しない)なので、それらの物理量を”ちゅぶらりん”の演算子として表現しておきます。
これを組み合わせた、[演算子]×[波動関数]=実定数×[波動関数]の形式(固有値方程式)に量子的世界のしくみを見出すのです。
また、数式アレルギーのある根っからの非理系の人にも、終盤の「哲学的考察」の部分は面白く読めるでしょう。
唯物論と観念論をそれぞれ簡潔に紹介し、プラトンの『国家』の洞窟の話(首枷をはめられた囚人は影が映し出されている壁面しか見たことがないが、その背後に実在=イデアがある)から、カントの「物自体(=人間には感知できない真の実在)」を持ち出し、「位置や運動量の背後にある”物自体”は我々には捉えられない複素ベクトルである、ということを量子力学が語っている」との著者の解釈が述べられています。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・話がややこしくなったら、いつも「これはたった1個の電子の状態を、手を替え品を替えて説明しているにすぎないんだ」と自分自身に言い聞かせてほしい。
・運動量pを確定すれば位置xは確定せず、位置xを確定すれば運動量pは確定しないということになる。これこそ、講義1のゼノンのパラドックスのところで述べた不確定性原理に他ならない。不確定性原理は、物理現象というよりは、数学的必然として現れるのである。
・量子力学を学ぶ理由は、この世界の構造を知りたいからである。
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<参照したいサイト>
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