森を出て サルから分かれた サピエンス
未来を信じる 力の源
<要点 / この書籍から得ること>
・人類がどのように霊長類の中でも独自に進化してきたか、原因や道筋の考察
・関野氏のグレートジャーニーの動機や経緯
・現代の教育や社会システムへ、人類の原点に実体験で触れてきた著者2人の視点からの提言
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
ゴリラの生態から初期人類の由来を探る研究者で京大総長の山極氏と、人類がアフリカから南米まで到達した過程を逆に辿る旅「グレートジャーニー」を成し遂げた関野氏の対談。(NHK教育テレビ「スイッチインタビュー」での収録は一部)
「人類の来た道を振り返り、現代と未来を確かな目で見つめ直して」いくための事例紹介や考察などの意見交換がなされている。
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
山極氏もそもそも関野氏と同様、冒険家になりたかった、という原点の話から始まる。
専門のゴリラ研究の発端である日本のサル学について、創始者の今西錦司の紹介や猿を研究することで人類の起源を探る意義があることを解説する。
その後の本書全体のメインは、人類発祥、人類が世界各地に拡散したこと(=グレートジャーニー)の要因や意義についての対話。
「食物の共有」「共同保育」が人類の最も大きな業績であり、人間としての出発点であること、「共感力」を育んだことで類人猿から人間になった、などの推察がなされる。
そこから戦争の起源についても議論され、「互いに面子を保つ」というゴリラやアマゾンの原住民に見られる殺し合いを避ける工夫、すなわち「負けない論理」=「競争の裏側の論理(by伊沢絋生)」(今西錦司の「棲み分け」にも通ずる)に学ぶことの提言がある。
羞恥心(顔を赤らめるという生理現象もあるので古くからあったはず)がモラルや規範の起源、というアメリカの進化人類学者の説を引き合いに、”力を持たない”仲裁者の存在の重要性を指摘している。
後半は主に現代日本の若者たち(の受けた教育)やグローバリズムの蔓延した社会への批判に展開する。
関野氏が挑戦し達成したグレートジャーニーで数々の困難を克服できたのは、「待つ」という技術であることがハイライト。
「待つ」とはすなわち、「未来を信じる」ことであり、「未来に目標を置く」ことができる唯一の動物としての人間の特質に言及している。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・(山極)仲間や家族と一緒に食事するということー「共食」も人間ならではの特徴ですね。野生動物は共食はしません。ゴリラやチンパンジーは近い行動をしますが、基本的には自分が得た食物をその場で自分で消費する。
・(関野)私はさまざまな場所を旅してみて、時間を計るのにもっとも適しているのは太陽ではなく、月だと実感しています。
・(山極)希望を持ったり、将来に向かって現状を、そして自分を変えようとする心を持っているのは、やはり人間だ、と。
(関野)その「心」があるから、人間は、たとえ住み心地のいい場所から追い出されて過酷な状況に置かれても、諦めずに新たな環境に適応して、そこを住みやすい場所に変えてしまうのかもしれません。
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<参照したいサイト>
<主な参考文献>
・モラルの起源ー道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか(クリストファー・ボーム)2014年
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