感性を 子ども時代に 育ませ
不思議見通す 生物ハカセ
<要点 / この書籍から得ること>
・分子生物学の基本的な知識のわかりやすい例え話
・著者2人が子ども時代に出会った「センス・オブ・ワンダー」の追体験
・生命について文系・理系両方の視点から見た記述
<概要 / 本書の内容をざっくりと>
「私たちにとって子ども時代というのはどんな意味を持っていたのか」について、作家の阿川氏が生物学者の福岡氏に対して質問する形式がメインとなっています。
生命についての知見を解説しながら、子どもが「すごい!」「きれい」「不思議」に出会い成長するきっかけになるということ、すなわち「センス・オブ・ワンダー」を軸に話を展開させています。
(下に続く↓)
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<書評 / あらすじ&レビュー>
まず、絵本「せいめいのれきし」や「ドリトル先生」に福岡氏が影響を受けた話を中心に、児童文学者の石井桃子氏の言葉「大人になってからあなたを支えてくれるのは子ども時代のあなた」や、レイチェル・カーソンのいう「センス・オブ・ワンダー:神秘さや不思議さに目を見はる感性」を引き合いにして、子どもの時の体験の大切さについて語り合います。
また、今の生物学は生命の謎を追求しているつもりで死を詮索している「壮大な自己矛盾」に気づき、分子生物学の手法や”動的平衡”を着想したシェーンハイマーの実験の紹介から、生命の割り切れなさについて解説がなされ、以降、花粉症、狂牛病、環境問題、原発、戦争など、短絡的な分解思考が導いた人類の愚かさを指摘しています。
そして、生命における当面の問題は、文化系的な知と理科系的な知が一緒になって考えるべきで、理系・文系どちらの人にも有意義な新しい生物学、いわゆる生命学を語りたい、という福岡氏の意思表明があります。
最後に、「何かを判断・決定・選択するときにはセンス・オブ・ワンダー(=バランスに気づく)を起点に考える」(福岡氏)、「外の世界がどんなに変化しても、一番大切なことのヒントは自分の中に折りたたまれている」(阿川氏)と、矛盾と行き詰まり感のある人間社会に向けての提言で締められます。
<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>
・(阿川)「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要じゃない。子どもたちが成長の過程で出合うことが知識や知恵を生み出す種子だとしたは、情緒や感受性はその種子を育む肥沃な土壌のようなもので、子ども時代はその土壌を耕すとき
・(福岡)レーウェンフックやデカルト的なほうを選んじゃったのは、そのほうが資本主義社会に親和的だったからだと思うんです。分けて部品化して機械論的に考えると、個々のものに価値が生まれて商品化されていくという流れで。
・(福岡)ネズミを殺すのはやめて、私は生命に何を見つけようとしてきたのかを語っていくことに限られた時間とエネルギーをかけるべきなんじゃないかなと思うんです。だから、書くことですね。それに専念したい。
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<参照したいサイト>
オフィシャルブログ「福岡ハカセのささやかな言葉」
福岡 伸一 | 青山学院大学総合文化政策学部
阿川佐和子 | 著者プロフィール | 新潮社
かつら文庫のごあんない(子ども)
<主な参考文献>
・生物と無生物のあいだ(福岡伸一)2007年
・せいめいのれきし(バージニア・リー・バートン)1962年
・ちいさいおうち(バージニア・リー・バートン)1942年
・ドリトル先生ものがたり(ヒュー・ロフティング)1920年
・うから はらから(阿川佐和子)2011年
・すばらしい人間部品産業(アンドリュー・キンブレル)2011年
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