食は国家なり!日本の農業を強くする5つのシナリオ(横山和成)2010年10月出版

”知る”者の 担う責任
危機避ける シナリオ描け 技術を以って

 

<要点 / この本から得ること>

・バブル崩壊から2010年までの食をめぐる問題や経済の流れ

・農業問題への対策として考えられる4つのシナリオ「A:保護主義」「B:完全自由化&国際化」「C:主権化及び多様化」「D:無策でなく不策」

・日本農業の持つ循環型の土作りの手法が世界最高水準の技術であるという認識

 

<概要 / 本書の内容をざっくりと>

1995年に国家機関の中堅研究者向けセミナーで聞いた「2025年”帰還不能点”までのシナリオ」と、その前年に出版された『2025年日本の死』(水木陽著)の同時性に驚き、最悪のシナリオ回避のために食糧生産現場と土壌解析の研究で活動してきた著者による政策提言です。
主に食の問題において1990〜2000年代に露見した事件や農産業の危機的状況を振り返り、それを受けて4つのシナリオ(上述)を提示し、小説風の調子で未来予測を織り交ぜながらそれぞれ詳述しています。

(下に続く↓)

 

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まず第1章で雪印事件、BSE、ミートホープや事故米など食の安全性についておさらいし、過去の戦争やオイルショックから現在の国際経済競争のデータをふまえ、日本の農の未来が楽観できないと警鐘を鳴らします。
それにあたり「農業技術の継承」「持続的農業生産の環境整備」という”技術を以って”克服を期し、読者への参画を呼びかけています。

第2・3章の日本政府が取りうる方針としてのシナリオA・Bは、いずれも結局は悲惨な状況すなわち超格差社会になることを推察しています。
特に国際自由競争下でのランドラッシュ(=世界農地争奪戦)について著者のアルゼンチンでの実体験も含めリアリティのある考察がなされています。

一方第4章では、農業者の主体的な経営・消費者も農を身近にすること(ベランダ農園や、顔の見える関係構築など)に加え、日本古来の循環型農業技術が強みと評価されるようになるシナリオCを、「日本の食を支える最高のシナリオ」として推奨しています。
また第5章の、個人が主体の自己責任社会(無政府状態に近い)となって、自然の摂理に従い生物としての人間が持つポテンシャルに任せるシナリオDも、愚策を繰り返し現場を疲弊させるよりは悪くはないかもしれない、と考えています。

 

<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>

・戦後の日本政府は、”日本農業”氏を車椅子に乗せ、かれが望む通り、どこにでも押していった。しかしいつの間にか、”日本農業”氏は自慢の足腰がすっかり萎えてしまっていることに気付く。

・極端な楽観論も、極端な悲観論も必要はない。しかしそれでも状況は冷静に見てかなり危機的なものであり、論理的な帰結はそれほど明るいものではない。そしていつでも政策提言は最悪の状況が起きることを前提にすべきである。

・自然は多様化を選択し、人智は精緻さを好む

 

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<参照したいサイト>

NHKスペシャル ランドラッシュ 世界農地争奪戦
微生物の力で世界の土を豊かに 株式会社DGCテクノロジー

 

<主な参考文献>

・2025年日本の死(水木陽)

 

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