田舎のヒロインが時代を変える(やまざきようこ)2004年4月出版

農村と 都市とをつなぎ
雪印 100株通し 現場を伝え

 

<要点 / この書籍から得ること>

・ラーバン(田舎と都会の合成語)の事例としてドイツの農村の取り組み

・著者が泊まり歩いた日本全国の農山村の様子と、経済論理で計れない農業の価値

・「田舎のヒロインわくわくネットワーク(現・田舎のヒロインズ)」の立ち上げの経緯から全国集会の詳細なレポート

・2000年雪印食中毒事件と2002年食肉偽装表示のあらましとその後の展開

 

<概要 / 本書の内容をざっくりと>

福井県坂井市三国町に夫婦で入植・開拓し農家となった女性(著者)が、ドイツでグリーンツーリズムの視察やアメリカでの国際受精卵学会の参加、そして地元地域で本物のエゴマや豆腐を作り食べることの活動をきっかけに、食や農業の情報を発信する全国組織の立ち上げと全国集会に奔走する様子が克明に描かれています。
その活動の中で雪印の事件を受け、日本の乳業が外国資本に支配されるのを防ぐことなどを動機に10人1組で1000株購入し、株主総会に参加する運動の報告にもなっています。

(下に続く↓)
 

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<書評 / あらすじ&レビュー>

夫婦の長年の夢であるログハウスを手に入れ、その活用の仕方としてグリーンツーリズムの拠点にすることを考え、著者がその視察としてドイツで見た農家民宿、牧場経営や乗馬、老人ホーム、農産加工、バイオマス発電、森の幼稚園などをレポートしています。

帰国後に農や食の現場を見てもらう活動の中、保守的・閉鎖的な日本の農業界に対し、「もう、黙っているのはやめよう」をキーワードに全国の農家の嫁たちが団結し発信する組織を呼びかけます。
推理作家・斎藤栄氏からの100万円の応援もあり全国集会が開かれ、抑圧されていた女性たちが活き活きと発言するようになる様子や、2002年早稲田大学講堂での第4回全国集会で当時の奥島早大総長と武部農水大臣への質疑応答、そして雪印の西社長の対談が実現するまでに成長する経緯が詳細に書かれています。

その中の重要な出来事として、雪印乳業の不祥事を取り巻く一連の経緯を現場での調査や株主総会で発言する場面なども含め詳述し、農家の女性の声を大企業に伝える活動の大切さを一貫して伝えようとする内容となっています。

 

<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>

・家畜を飼ったり、野菜やお米を作って販売するという経済の論理だけで考えたら、人間が土地に縛られたり、家畜の奴隷になって世話しなければならないというネガティブな面が目につく。ところが一歩視点を変えると、農業を通して、食にまつわる文化や生活習慣、生物や化学や地学、文学や歴史、哲学や宗教など、広く大きな世界が見えてくる。

・「私ら農家の女性が、黙っているから悪いんや。安いか高いか、儲かるか儲からんか、農業を目の前の経済の論理だけで計っとったら、大切なものがみんななくなってしまうわ」

・一頭の牛と一生涯つき合っていく中から食べ物の真実が見えてくる。人の命を作るさまざまな食べ物のこと、大地のこと、そして生きとし生けるものの命。そうした大切なものを子どもや若者、子どもを育てる女性に伝えたい。

 

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<参照したいサイト>

NPO法人田舎のヒロインズ
北陸にスイーツの名店あり。「ジェラート・カルナ」と「おけら牧場」の物語

 

<主な参考文献>

・第二の性(ボーヴォワール)1949年
・われら田舎のヒロインたち(山崎洋子)1998年
・奪われし未来(シーア・コルボーン他) 1997年

 

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