物理数学の直観的方法(長沼伸一郎)1987年10月出版

分解し 再構築は 不可能と
見抜く直観 導く数理

 

<要点 / この書籍から得ること>

・オイラーの公式やフーリエ変換などいくつかの重要な分野の大学履修レベル数学を、直観的に理解するプロセスを解説され、その数式や定理の本質に至れる

・「三体問題が解けない」という謎が行列式を使った非常にシンプルな説明で解明される

・経済、生物工学、エコロジーなどの複雑系の時代に向け、現状の科学認識の脆弱さ・誤りを大胆に指摘する知的興奮

 

<概要 / 本書の内容をざっくりと>

国内の研究者・技術者全体における同書の普及率は10%ほどと推定され、”理系”ならば全員必読の書です。
理系を選択した(=大学受験に向けて数学を勉強した)ことで、これほどまでに美しい本を深く読める下準備ができていることが幸運と思えるほど卓越した面白さです。
さらに、本書後半の数学・物理の発展の歴史から考察し、経済の分野や遺伝子工学まで最先端科学の方向性の危うさを指摘している章は、文系の方であっても数式もほとんどなく読むことが可能で、内容は非常にスリリングです。

(下に続く↓)
 

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<書評 / あらすじ&レビュー>

代表的な例として、最もシンプルかつ神秘的で美しいオイラーの公式を、eの定義から整理を始め「−1をかける」ことの作用的意味からiの直観的理解を確認し、複素平面上での航行として絵で理解できるようにしたのが象徴的です。

その他、本来関係のないはずの接線(微分)と面積(積分)の間をつなぐことや、テイラー展開をブロックで考える基本的な解説や、エントロピーの「情報量」の観点からの説明で敵対する2国間のスパイ戦略の例え話を用いるなど、文学的センスも楽しめます。
最後の章では、デカルト流の合理主義的な、現実にあるものは分析して再構築可能だと考える”調和的宇宙(ハーモニック・コスモス)”を「300年前から続く壮大な勘違い」と看破しています。

 

<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>

・マスターしているということが単に疑問を感じなくなることに過ぎない場合は多いのであり、実はそういう傾向はこの基本定理あたりから始まるものらしい。

・エントロピーは、平均化がなされた時に最大の値をもつということであり、粒子の数や温度が増大した時にも大きくなる。これをひっくるめるにはたしかに平均化よりは乱雑さという言葉の方が良い。ところがこうして無理矢理一言で言ってしまったため、この概念は適用限界を超えて一人歩きを始めてしまった。

・アダム・スミスたちが自由放任を叫んだとき、そこには「均衡」の概念はあっても「縮退」の概念が抜け落ちてしまっていた。どうやらこれも彼らが無意識のうちに社会をハーモニック・コスモスだと錯覚していたためである疑いが濃い。

 

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<参照したいサイト>

次の人類を支える新たな科学は、この男が創り出す:長沼伸一郎(物理学者)

 

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