マエカワはなぜ「跳ぶ」のか(前川正雄・野中郁次郎)2011年4月出版

「場所」とよぶ 西田・今西 哲学の
”公”感覚を イノベーションへ

 

<要点 / この書籍から得ること>

・創業90年以上の前川製作所グループ(以降「マエカワ」と表記)の4つのイノベーション事例
■スクリュー型コンプレッサー:国内でいち早く製品開発し、超電導分野などで世界中に納入
■ニュートン3000:脱フロンの自然溶媒でも省エネ効果高く、国内冷蔵倉庫でのシェア8割
■エンドファイト:植物共生菌をゴルフ場の芝をきっかけに稲へ応用(商品名「イネファイター」)
■トリダス:自動化が困難なブロイラー脱骨機を開発に20年ほどかけ世界市場占有率100%

・日本的・東洋的な”公”の思想(”私”の否定ではない)に基づく開発・製造・販売・サービスの全員参加型の企業運営の実践実例

・難解と言われる西田幾多郎の哲学の、経営を通した具体的な理解

 

<概要 / 本書の内容をざっくりと>

マエカワを世界的企業へと飛躍させた経営者による、製品開発ストーリーや市場をどう切り開いたかのプロセスを、日本を代表する哲学者(西田幾多郎、鈴木大拙)と生物学者(今西錦司)の思想を織り込みながら紹介したものです。
「世界で最も影響力のあるビジネス思想家20」の野中氏の解説コラムが各章の補足・まとめの役割を果たしています。

(下に続く↓)
 

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<書評 / あらすじ&レビュー>

マエカワのいう「場所」とは、物理的な場所のことでなく、西田の中心思想「自己とは場所の中にいる自己が本当の自己」からきています。
”跳ぶ”とは、〈高い目標や理想を感覚的に持ち、それに対して客観と調和させながら近づいていく(西田)〉ことであり、マエカワでは「社会に提供する商品やサービスを自在に変えていく」ことを指しています。

「生物は変わるべくして変わる(今西錦司)」という生命観から、企業が”跳ぶべくして跳ぶ”のは、生物・組織としての本能に由来し論理での分析は不可能と考えますが、「どうやって”跳ぶ”のか」を四つのステップで整理しています。
1.市場環境の変化を感じ取る
2.環境の変化をチームメンバーにうまく伝え合う
3.共同体の質を高める
4.変化に応じて自分たちをうまく変えていく

また、言語化される以前の感覚(西田は”純粋経験”と呼ぶ)を小さなチームである”共同体”で伝え合うために、江戸時代の成熟文化を引き合いに”公”意識の重要さを説き、難解とされる西田哲学・京都学派の実践版解説書としても読めるでしょう。

 

<抜粋 / ハイライトフレーズ3選>

・あらゆる感覚を研ぎすまして世界を感じることだ。企業も地上に生きる生命として、取り組む事業を見出さなくてはならないのだ。

・感覚知を得るためには、雑音情報として情報が発生している場所に、無私かつ無心で入っていくことである。

・日本は何千年も前から共同体のなかで全員働いて、平等に参画するという文化をつくりあげてきた。これが感覚知を自然に交流させる風土を育んできた。古事記、万葉集、禅、江戸時代の国学から現在に至るまで、大きな流れとなって続いている。

 

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<参照したいサイト>

前川製作所HP
自分を無にして起こした2つのイノベーション-前川製作所顧問 前川正雄(プレジデントオンライン)

 

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