粘菌-偉大なる単細胞が人類を救う(中垣俊之)2014年

”いきもの”と ”モノ”との間 行き来する
単細胞に 知性の始原

 

<この本から得られること>

・イグノーベル賞(※)の授賞式の詳細な様子や、その後の社会的影響などの経緯
※ノーベル賞のパロディ版で「人々を笑わせ、考えさせる研究成果」に与えられる

・粘菌(=真性粘菌の変形体)が迷路問題や交通網の最適解を出すメカニズムの簡易な解説

・学問に向き合う著者なりの大局的な視点と心構え

 

<こんな本>

2008年と2010年にイグノーベル賞を受賞した単細胞生物の知性を研究する著者が、エピソードや背景も含めた粘菌の科学研究の知見を一般向けに問いかけた内容です。

 

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第1章は、光の当たらないマイナーな研究を長年していた心細さから、イグノーベル賞を受賞し式典までの心情や詳細な報告がなされます。
粘菌の研究を「一点突破の全面展開:粘菌を覗き窓にして、生き物全体の普遍的なからくりがどうなっているかを知る」という位置づけとして、粘菌の知性、すなわち迷路や最適な交通網の経路探索、時間記憶、ためらい、個性(同じ状況での判断の個体差)を軽めに紹介しています。
(詳細な解説は前著『粘菌-その驚くべき知性』を参照)

第3章では、粘菌がエサを求めて最適な経路網を構築する際、〔①経路の最短性(経済性)、②耐故障性(保険)、③連絡効率〕の3つの評価基準で現実の関東や北海道の鉄道網と比較し、その類似性を解析しています。
その粘菌の問題解決方法を、自律分散システムと用不用の適応則(流量強化則)を適用して、運動方程式で表せるとしています。

第5章で”生物学と数学が結びついてできた果実”として「反応拡散系の不安定化」を紹介し、生命の不可思議さの説明を試みています。

この本のメインは第2、4、6章で述べられるヒトと粘菌の類似性を著者なりに見出し社会への提言をしている部分でしょう。
対象への好奇心を持つことで無意識のうちに脳が活動すること、一次近似をとる(大胆に関連性を見出す)ことの重要性、学ぶとは「自分自身が今いる世界から外へ出る」こと、観察することの本態は「何かを見ること」ではなくて「何を見たらよいか気づくこと」、などユニークな研究が高い評価を受けた人物の学問的態度がたくさん散りばめられています。

 

<ハイライトフレーズ3選>

・(イグノーベル賞授賞式後のMITでのレクチャーで学生から「グーグルなどがコンタクトをとってきましたか?」という質問に対して)「カーナビへの応用は考えている。将来、カーナビのコントロールボックスをあけると粘菌がいる、そうなることが私の夢だ」

・粘菌のエサ経路に関しては、すでに答えは目の前にあって、実はそれが一体どんな問いかけの答えなのかを見つけたのだといえます。つまり、適切な「問い」を発見したわけです。

・粘菌は迷路を解くし、人間の作る鉄道網に勝るとも劣らない機能的なネットワークをつくります。時間に対する記憶や逡巡の原型も見られます。それらは、どれも比較的単純な運動方程式で再現できるものでした。

 

<参考サイト>
ガイダンス・コラム記事一覧@二十四節気
かしこい生き方のススメ

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